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『刈り上げジャンヌダルク』

 最近、脳味噌の硬化を感じつつある生田です。

 十年前には小説のネタ妄想など湯水の如く日夜垂れ流してきたというのに、今では湯水の如く時間を浪費してもロクな妄想一つ捻り出せない有様です。
 ようやくプロットが浮かんだかと思えば、最近読んだ小説のネタじゃん、とか。
 凹むッ! 実に凹むぞッ!





 とか、勢いよく凹んでても仕方ないので、12月に文学フリマで買った本を読んだ感想とか(遅いけど)書くことにします。

 今回は文芸サークル:明日から休講です。さんの短編小説集、
 『刈り上げジャンヌダルク』です。

 このタイトル、ベッソン監督の映画『ジャンヌ・ダルク』のDVDパッケージから、必死の形相で睨み上げている凛々しきミラ・ジョヴォヴィッチが思い浮かびますが、たぶん関係ないでしょう。

 作品紹介は僕の拙い説明よりもサイトを見て頂いた方が良いかと思います。
 文芸サークル:明日から休講です
 http://www.geocities.co.jp/hagi_inthesky/asita.html
 作品の序盤部分も読めるとのことで、一見さんにも優しい親切設計ですよ。

 以下、各作品の感想です。
 ネタバレしないよう努めて書くつもりですが、保証は出来かねますのでご了承の上でどうぞ(一部文字色など変えている部分もあります)。


 兎月竜之介『ハネツキ』

 羽を持って生まれてきた人間と聞いて、僕は真っ先に安倍吉俊の『オールドホームの灰羽達』が思い浮かんだのですが、WEBラジオ(※後述)で著者の兎月竜之介さんが『灰羽連盟』に触れていたのを聞いて、やはりモチーフとして灰羽の影響があったんだなぁ、と納得。
 ハネツキと呼ばれる一寸ファンタジックな翼を持つ人々と、彼らを取り巻く偏見や社会的排除といった問題のリアリズムを緻密に描き出しています。
 過去の経験から気弱になりつつも懸命に生きる主人公・裕理の視点で語られるストーリーと、その安定感、羽を持つことのない現実の僕らでさえ、思わず感情移入せずにはいられない鮮やかな人間描写は見事の一言に尽きます。


 すみやき『青いリボンと学ランと』

 自身を偽って生きる、というネタは乙一『GOTH』の森野夕、奈須きのこ『空の境界』の両儀式などで使われていますが、この作品のヒロイン・白川由加里は以上に挙げた作品の人物に比べると兎角不自然で弱々しく、強がっていても結局自分を捨てきれない人物です。しかし、それゆえに彼女は他にない魅力に溢れています。
 一人称で改行が多いこともあり、少々読み辛い部分はありますが、主人公の語りは単なる状況描写ではなく、ヒロインの心に踏み込むことへの躊躇や傷つけまいとする葛藤など、人間味に溢れており好印象です。
 正直なところ、僕はこのヒロインが兄と同じ道を辿って悲惨な結末を迎えてしまうのではないかと、始終ヒヤヒヤしながら読んでいました。


 須江岳史『僕の終われない物語』

 本筋はメタ・ファンタジーですが、その「メタ」な部分の解釈はSF的で、所謂ディストピア小説のような一面があります。ジャンルはSF小説になるのでしょうか……クラークの『幼年期の終り』、山本弘の『メドゥーサの呪文』とか好きな人にオススメ、かも。また物語全体において、ニーチェの超人思想やニヒリズムに通じる要素も感じられます。
 まず冒頭からの、アイデンティティを失いながらも生き続けるしかない、という主人公の苦悩への叙情的な筆致に惹き込まれます。展開が早いため目まぐるしく思う箇所もありますが、非常に文章のリズムに優れており、壮大(かつ空虚さも感じられる)な世界観と重厚なストーリーが魅力です。


 秋間一葉『遠い日の』

 小説というより散文詩寄りの作品でしょうか。全体と通して淡々と語られる物語は、温かみに欠けるようにも思えますが、それがより印象深いシーンを鮮明に現しています。終盤で明らかになる“問いかけ”の答えなど、飾り立てない言葉の数々には読者をハッとさせる重みが感じられ、短いながらも丁寧に書かれた文章も相俟って、他作品に埋もれない存在感のある作品です。
 何というか、モーリス・ラヴェルのピアノ曲のような静けさが似合います(意味不明な感想ですみません)。


 兎月竜之介『ハネツキ!』

 『ハネツキ』の番外編。本編より後世、ハネツキ達が社会的な迫害から解放された時代を舞台としており、本編とは打って変わってコメディ色の強いショートショート五作から構成されています。
 著者の兎月竜之介さんはプロのライトノベル作家として執筆されている方で、この番外編はまさにライトノベル的な陽気さに満ちあふれている作品です。活き活きと描かれた登場人物や主人公の語りなど、本編を読了後に読むことでより感慨深く楽しめることと思います。


 すみやき『やつとサウナとシャトルラン』

 『青いリボンと学ランと』の番外編。本編では冒頭を除いて語られなかった、主人公とヒロインの日常風景を描いた作品となっています。語り手が主人公からヒロインへと移っており、本編にも増して青春小説らしいエピソードという感じです。
 余談。「目の前の患者を治せよ」という言葉は、ヒロインの場合、凄く意味深だと思います。


 以上、六作品の感想を書いていったわけですが。
 明日から休講です。さんのWEBラジオで、著者の方々による『刈り上げジャンヌダルク』掲載作品についての座談会が投稿されているようです。
 そちらをご試聴頂ければ僕の感想とか読む必要ないと思います。たぶん。
 文芸サークル『明日から休講です。』第一回web座談会
 http://www.nicovideo.jp/watch/sm13290552
 (視聴にはニコニコ動画のアカウントが必要です)


 次回は未定です。
 また小説のネタに詰まったらチョロチョロ書くかもしれません。
  1. 2011/01/15(土) 21:32:52|
  2. 生田 六之助
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