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SF作品のサイバースペースを大まかに三つの類型によって区分してみる。

ポリス(『ディアスポラ』)型
 生命活動システムとしての電脳空間。
 
マトリックス(『ニューロマンサー』)型
 情報集積システムとしての電脳空間。

メタヴァース(『スノウ・クラッシュ』)型
 生活拡充システムとしての電脳空間。



 上から順に電脳空間への依存度が高くなります。電脳空間という海があるとして、ポリス型は深海層、マトリックス型はテクニカルダイビング、メタヴァース型は海水浴場といったところでしょうか(すげえ適当)。単純なピラミッド構造のヒエラルキーを成すわけではなく、それぞれが異なる性質を持っています。
 メタヴァース型が現実を模して作られた仮想の空間であるのに対して、ポリス型のユーザーにとっては仮想そのものが現実の空間――帰るべき肉体はなく、つまるところオフラインは死と同義です。また、マトリックス型の電脳空間が技術者やハッカーの専門技術めいたものであるのに対して、メタヴァース型は今日のSNSのようなサービスと同様に、より広い範囲のユーザーを対象に作られています。

 で、実際にSF作品のいくつかをこの分類に当てはめてみると以下のような感じ。

・ポリス型
 『ディアスポラ』
 『マトリックス』
 『トータル・リコール』

・マトリックス型
 『ニューロマンサー』
 『攻殻機動隊』
 『serial experiments lain』

・メタヴァース型
 『スノウ・クラッシュ』
 『電脳コイル』
 『サマーウォーズ』


 注意して欲しいのは、これらはあくまで作品中においての電脳空間の性質を分類したものであって、作中の要素の全てに当て嵌まるわけではないということです。
 例えば、『ニューロマンサー』に登場するディクシー・フラットラインの視点では電脳空間はポリス型そのものですし、『lain』に登場する電脳空間(ワイヤード)の中にはメタヴァース型(所謂MMO)のものも登場します。またラストで明らかになる主人公玲音の正体は、前述のディクシーにも似たポリス型の電脳空間を想起させられるものです。同じマトリックス型でも、『攻殻』と『lain』では電脳空間そのものの描写のされ方も異なります。

 電脳空間というと、アヴァター(『スノウ・クラッシュ』)やアイコン(『ディアスポラ』)、メタファライズ(『lain』)といった、仮想空間の中で肉体とは異なる分身を操作するイメージを抱きがちですが、それはそれぞれの作品における電脳空間の個性の違いでしかありません。
 これは昨今、仮想現実や拡張現実と呼ばれている技術が、「いかにその体験が肉体に依存するものであっても」電脳空間の一片に過ぎないことを示しており、『トータル・リコール』と『電脳コイル』をサイバースペースに類する作品としてリストに含めたのはこのためです。前者は夢と記憶、後者は拡張現実、外見的にサイバースペースと一線を画すように思える二作品ですが、プログラム化された世界を体験していることに違いはなく、『トータル・リコール』の主人公クエイド(ハウザー)と『マトリックス』のネオ(トーマス・アンダーソン)は記憶によって自己同一性を獲得できないという点で等しく、『電脳コイル』の電脳ペットと『ディアスポラ』の主人公ヤチマは肉体を持たない生命として本質的には同様の存在です。

 ところで、この三つの分類の基礎にある三つの作品は、その発表の古い順に『ニューロマンサー(1984年)』『スノウ・クラッシュ(1992年)』『ディアスポラ(1997年)』となっております。これは時代と共に変遷していったネットの歴史とも呼べるもので、『ニューロマンサー』は通信技術としてのインターネットの発展、『スノウ・クラッシュ』はウェブによる利用者の拡大――では、『ディアスポラ』は?
 SNSはネット上に普遍的な連帯を生み出したという点において、新たなネットの歴史を刻んだとも言えますが、SN(ソーシャル・ネットワーキング)は、現実の社会的ネットワークが持つようなインフラを備えているわけではありません。その点では『スノウ・クラッシュ』の延長上にあたるものと考えられます。
 今のように一々パソコンを立ち上げたりブラウザを開くこともなく、ログインもせずオフラインという状態もない――ポリス(都市)型の言葉通り、誰もが生まれながらシチズン(市民)としてネットを行き交う、そんなネットワーク・システムが完成した時、『ディアスポラ』の時代が訪れるのでしょう。
 その頃には電脳空間と現実世界の境界なんて無いも同然かもしれませんね。



  1. 2011/01/29(土) 23:17:33|
  2. 生田 六之助
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